概要
心理学と行動経済学をベースに、ユーザーの行動を促すデザインに関する本行動変容デザインは、行動経済学と心理学、定量と定性データの分析、プロダクト開発とUXの3分野で成り立っている。
第1部 心の働きと行動変容を理解する
ユーザーインターフェースを考え前に、人の心がどう物事を決めているのか知っておく。
ここでは3つの分野のうち、行動経済学と心理学の研究について紹介してある。
基本となる二重過程理論
複雑な脳のプロセスを抽象化してシンプルにしたもの。
- 直感の心理(システム1)
- 熟慮の心理(システム2)
私たちは選択する時でさえさぼっている
プロダクトの価値を判断する時、「専門家」が薦めているかどうかを気にして判断の材料にする。(Till and Busler 1998)
記憶や注意力、意識には限界がある。最適解を見つけ出そうとせず、最初に良さそうだと思ったものを選択する。
シンプルはやはり大事
ユーザーにとって、簡単で、慣れていて、目に優しく、リワードがあり、失敗せず、目的を達成できる、当たり前のことが大事。これらの基本が欠落していると、ユーザーに失敗だったと感じさせてしまう
意思決定プロセス
習慣から、計算など意識的な活動まで、思考への介在は様々である。
ビヘイビアプラン
ユーザーが初心者の状態から行動を完了するまでの詳細なストーリー
人間の思考には限界がある。ユーザーは文章をまともによんだりしない。なので、ユーザーへの認知の負担に配慮したインターフェースが理想。
CREATEアクションファネル
行動にとりかかるには、5つの前提条件がある。すくなくともこの条件をクリアできないと行動に移らない。これらの頭文字から、CREATEアクションファネルと呼ぶ。
- Cue : きっかけ
- Reaction: 反応
- Evaluation: 評価
- Ability : 今使えるか?実行可能か?
- Timing : いつ行動すべきか?
- Execute : 行動を実行する
これら5つの心のプロセスが前提条件
プロダクトの設計はこれらを考慮しておく必要がある。
ユーザーの行動をいつでも変えるアプリケーションを作れるほど人間は単純ではない。しかしCREATEアクションファネルを考慮することで、リリース時に最高の状態を目指すための設計と、プロダクトの有効性をデバッグするために役立つ。
行動を変えるための戦略、習慣を作る、意識的な行動を助ける
- デフォルトにする
一度デフォルトにしてしまえば、ユーザーが意識せずに済む。可能ならこの方法が楽。
- 「ついで」にする
ユーザーが元々やっていた行動で、自動的に実行されるようにする。
- 繰り返す行動を自動化する
毎日記録しなければならないことなどを、プロダクトが代わりにやってくれる。
- 習慣のループ
キュー、ルーティン、リワードのプロセスが有名
- すでにある習慣を変える
キューを避ける、新しいルーティンで置き換える
- 意識的な行動を助ける
行動に必要なステップをプロダクトが手伝う
まとめ
行動を変えるためには、意識的な選択が必要。CREATEアクションファネルのプロセスを邪魔しないことが前提になる。
出来る限りユーザーの作業をなくせる技術的解決策を探そう。行動そのものを変えようとするより効果的なことが多い。
ここで示した戦略は、ユーザーに求められる選択や作業を単純化しているに過ぎない。
第2部 適切な成果、行動、アクターを見つける
ここでは、定量と定性データの分析をするため、プロダクトの成果は何か、プロダクトが助けるユーザーは誰なのか明らかにし、行動を変えるためのアイデアをつくる方法を紹介している。
この部は流し読みでいい印象
第3部 コンセプトデザインをつくる
ある行動のためにデザインしようというとき、どのように五つの前提条件(キュー、反応、評価、アビリティ、タイミング)を揃えればいいのか。これらはユーザー自身の知識や特性、周囲の状況などの環境、行動自体の難易度や関連作業といった要素で決まる。
行動のための文脈をデザインすることで、CREATEアクションファネルの前提条件が実際に揃うかどうかに影響する。第3部ではこの文脈を次のような要素に分類している。
- 行動を構造化して、実行可能にする
- 環境を構築して、行動しやすくする。
- ユーザー自身の準備を手伝う
行動を構造化する。
ビヘイビアプランを作る。このとき、プロダクトだけでなく実世界の作業を含める。
- ユーザーが行動を完遂するために必要なあらゆる作業をかきだす。
- ユーザーの障壁を追記する。
- 必要最小限のアクション(MVA)を抽出する。繰り返すことは一度に。あったらいいな程度のステップは無くす。
- デフォルト化、自動化、ついで化などの「チート」を検討する
- ユーザーにとってわかりやすく伝え、実現できそうに思わせる。
- なるべく大きなステップで実現できるように見せる。
- ステップごとに達成感を与える。
以上のような方法で、ユーザーが完遂する必要のあるステップに分解しよう。これらは、シンプルで明快、成し遂げやすく、ステップごとに進捗や達成感が得られ、完了したことがわかることが望ましい。
環境を構築する
ここでいう環境とは、プロダクトそのものか、ユーザーのローカルの環境のこと。
- 動機を高める
- ユーザーに行動を促す
- フィードバックループを生成する
- 競合を排除する
- 障害を取り除く
このような方法で環境を構築しよう
過去を物語る
行動を変えるためには、その行動が自らの本来持つ自然な姿の延長線上にあると考えられるように手助けする。例えば、Movesというアプリはユーザーが普段どれだけ歩いているかを気づかせてくれる。ここから少し運動を増やせば良いと思わせている。
馴染みがあることに関連づける
行動ブリッジ(behavioral bridge) ユーザーが取りたい行動と、過去の経験との心理的なつながりを作る手助けをする。
例えば、Speekというアプリは、URLリンク共有と、従来のダイヤルイン番号を両方を使用できる。当時はユーザーが慣れないが便利なURLを、仕組みは従来のものと同じということをユーザーが理解できるよう気を配っている。
第4部 インターフェースをデザインする
ビヘイビアプラン(コンセプトデザイン)から、仕様書、ワイヤーフレーム、グラフィックデザインに落とし込む方法。行動変容の効果を高めるための応用。デザインからどのように実装していくかについて紹介している。
行動を変えるプロダクトのデザインパターン
ユーザーとの接触が多いパターン
- 意思決定支援
- 行動変容ゲーム
- タスク管理
- リマインダー
- ソーシャルにシェア
- ゴールトラッカー
- チュートリアル
ユーザーとの接触が少ないパターン
- 「違う角度で考えてみよう」を訴求する
- コールトゥアクション、行動喚起
- How-to tips
- リマインダーで計画作りを促す
- ステータスレポート
プロダクトを書き出す
デザインパターンを参考にしつつ、実際に見たり触ることのできるワイヤーフレームかモックアップを作る。この時、次のような質問に答えられないといけない。
- ユーザー体験は意味のあるものになっているか
- ユーザーの経験にあったコンテンツを、ユーザーに明確に伝えるための方法はどんなものだろうか
- ユーザーの興味をつかむインタラクションはどのようなものか
戦術を活かす
CREATEアクションファネルごとに、行動を変えるための戦略がある。
p259〜 ユーザーへの問いかけの言い回しや伝え方によって大きく成果が変わる戦術を紹介している。
第5部 プロダクトを改善する
プロダクトの効果の測定についてフォーカスする。データ収集と分析、効果を妨げる課題の発見。それを最新版に反映させて改善していく方法。
第6部 実戦に投入する
学びを実践するときに生まれる疑問にあらかじめ答えてあるよう。行動変容でどうやって持続可能なビジネスを生み出すか、プロダクトの利用の継続はどうすればいいか、というトピックス。